ストロークがもたらすもの ~スーザンという女の子の話~

赤ちゃんは無力  ~もし、ストロークが与えられなかったら~

ストロークの大切さについては、以前の記事「愛欠乏症にならないために ~ストロークのすすめ~」でご説明した通りですが、もし、その大切なストロークを幼少期に極端に与えられなかったとしたら、その子どもにはどのような影響があると思いますか?

ストロークとは、心と体の栄養ともいえるもの。

もし、生まれて間もない無力の赤ちゃんにストロークが与えられなかったら、どうなってしまうのでしょう。

今回は、TA(交流分析)を勉強した方なら必ず読んだり聞いたりしたことがある『スーザンという女の子の話』を用いて心の栄養である『ストローク』がどれだけ大切かということをお伝えしたいと思います。

スーザン ストローク セカンドチャンス 発達異常 虐待

なぜ、スーザンは発達異常に? ~医師たちの困惑~

スーザンという女の子は、1歳10か月の時に父親に病院に連れて来られました。なぜ病院へ連れて来られたかというと、発達異常をきたしていたからです。

この時のスーザンの体重は6.75㎏、身長は71㎝しかありませんでした。

一般的な1歳10か月くらいの赤ちゃんの平均体重は、10kg~12kg、身長はおよそ80㎝~85㎝くらいなので、スーザンは明らかに発達が遅れていたのです。

そして、入院した時のスーザンは、歩くこともハイハイをすることもできず、言葉を発することもできませんでした。そのうえ、人々から触られたり抱かれたりすることをひどく嫌がりました。

そこで、医師たちは様々な検査を行いましたが、身体的には特に異常がないことがわかりました。医学的に考えられる発育不全ではなかったのです。

では、なぜスーザンは発達異常になってしまったのでしょうか?

医師たちはスーザンには医学的な異常がないのに、なぜ発育異常をきたしているのかわからず困惑しました。

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発達異常になった理由 ~母親からの虐待~

医師たちは、当初スーザンの発達異常の原因がわからず困惑していましたが、それはスーザンが入院してから両親が一度も面会に来ないことを不審に思ったことから判明することとなりました。

普通の親なら子どもが入院していたら心配で毎日のように見に来るはずです。

しかし、スーザンの両親はただの一度もスーザンの様子を見に来ることはありませんでした。

実は、スーザンの両親は宗教上の理由から中絶ができなかったために望んでいなかったスーザンを産んだということがわかりました。

そして、スーザンを愛することもなく愛情をかけず、むしろ嫌って育てていたということもわかったのでした。

スーザンの母親は、赤ちゃんのスーザンを抱くこともなく、「私はあの子が嫌いで、もう面倒も見たくない。」という言葉を発するほどでした。

このことからスーザンは生まれてからずっと母親からの肉体的、精神的ストロークが極端に欠乏しており、そのために身体に発達異常をきたしたのではないかということが考えられました。

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病名は、母性愛欠乏症候群 ~成長ホルモンへの影響~

そして、医師はスーザンに〝母性愛欠乏症候群”という病名をつけました。

本来ならば十分に受けるべき母親からの愛情である『ストローク』が極端に欠乏したために、成長ホルモンの分泌が減少したため発達異常になったと診断したのです。

スーザンには愛情を注いで接すること、愛情をもって育てることが最重要だと判断し、一人の女性が母親代わりとしてスーザンの面倒をみることになりました。

また、病院のスタッフもスーザンにたくさんのストロークを与えられるような愛情を持った接し方をしました。

そのように接するうち、一か月もするとスーザンは普通の赤ちゃんのように大人に対して嬉しそうな表情を見せるようになりました。

大人から愛されて接するようになることで、スーザンは自分の意思をもって反応するようになったのです。そして、二か月の間に体重も3kg近く増え、身長も約5cmも伸びたのです。

成長ホルモンは、心の栄養が大いに関係するものなのですね。

このように、これまで止まっていたに近いスーザンの心身の成長は、愛情をもって接することで回復し、急激に心身の成長がみられました。

入院した時には歩くことも、ハイハイさえできなかったのに三か月後には歩くことまででき、人を怖がることもなくなったということです。

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心と体の成長 ~ストロークがもたらすもの~

このスーザンという女の子の話は実話で、「セカンドチャンス」という記録映画にもなっています。

スーザンの話でお分かりいただけたかと思いますが、人はストロークが欠乏すると、〝ストロークの飢餓状態″になってしまい、成長ホルモンにまで作用して心身に大きな影響を与えます。

心と体を健全に育てるためには、ストロークが不可欠なのですね。

そして、ストロークの欠乏はマイナスの影響があるのですがから、逆に言うと、ストロークをたっぷり与えることができたらプラスの影響をもたらすことができるのですね。

人はストロークをもらうことによって心が癒され、もって生まれた可能性や能力を伸ばして成長することができるのです。

ストロークを与えることは、誰にでもできることです。

皆さんも今日から始めてみましょう。自分にも他人にもストロークを与えることを。

きっと心の豊かな素晴らしい人がたくさん増えて、愛に満ちた世界が広がりますね。

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