悩み事ができたら ~ある会社社長との話~
以前、私は、ある会社の経営者のお話を伺ったことがあります。
その方の会社は小規模の会社でしたが、経営がなかなかうまくいってない状況で、社長であるその方は少し焦っている様子でした。
会社を経営するというのは、従業員の方にも責任がありますし大変なものですよね。
その重責でかなりお疲れのようでしたが、お話をうかがった後、私は一つの提案をしました。
それは、物事の見方を変えてみませんか?ということでした。
物事の見方を変える、と言うのは誰でも聞いたことがあると思います。
しかし、悩み事を抱えている最中にはなかなかできないことなんですね。
ですので、人に言われて気付くことが多いのです。
その時の会社社長には、今はうまくいっていないが、少し先を見てみてはどうでしょうか?とお伝えしました。
最初は、今がうまくいっていないのに先を考えてどうするんだ、と言うような感じでしたが、それでも私は、先を見て考えてみましょうと話しました。
従業員がもっと増えたら何ができるか、資金が回るようになったら今の事業をどのように展開するか、もっと広げたいビジネスはないか等、考えてみてはいかがでしょうか?とお伝えしたのです。
今、経営がうまくいっていなくても、将来うまくいったときのことを考えるように、もっと長いスパンで見ると、今の苦労はそのための勉強にすぎないのかもしれないですよ、と話しました。
そして、今苦労していることで、もっともっと経営者としての力が身につくはずです、ステップアップの時期なんですね。と言うと、社長の表情が変わりました。
会社経営は、本当に難しいと思います。しかし、行き詰った時でも考え方をちょっと変えるだけで、重い気持ちからスッと切り替わることができるのですね。
目先の悩み事にとらわれている、ということは、小さな箱の中に入って広い世界が見えていない状態です。
その会社社長も、目先のことにとらわれ過ぎて自分が進む方向を見失いかけていたことに気付かれたようでした。
角度を変えてみる ~三角△か? まる○か?~
同じような考え方で、角度を変えて考えてみるという方法もありますね。
私の小学校6年生の時の先生が、円錐を使って「角度を変えてみる」ということの基本的なことを教えてくれました。
今思うと、単純ですが深いことを教えてくださったんだな、と有り難く感じますね。
皆さま、円錐はご存知ですね。底が円形で先が尖った立体です。
その小学校の時の先生は、おもむろに円錐を手のひらに置いて、手の位置を私たちの目線の高さに合わせて言いました。
「これ、どんな形に見える?」
円錐ということはわかっていましたが、横から見ているので、ほとんどの子が「三角形」と答えました。
円錐は横から見ると三角形に見えますね。
すると、次に先生は、円錐の底の面を私たちのほうに向けて言いました。
「じゃ、これはどんな形?」と。
私たち、当然、「まる!」と答えます。
そして、先生はこんな風に話してくれました。
「そうだよね、でも、これはみんなもわかっていると思うけれど、円錐という尖った立体です。しかし、このようにこの円錐は、見る角度によって三角に見えたり、まるに見えたりしますね。このようい、ものによってはどこから見るか、見る角度が違うだけで違う形に見えるものがあります。だから、いろいろな角度から見ることが大切なんだよ。片っ方からだけ見て決めつけてはいけない。」と。
今思うと深い話ですが、当時はまだ小学校6年生。
私は、「なるほど、物体はいろんな角度がら見ることが大切。」と覚えたんですね。
でも、大人になってみると、それは物体だけではなく、出来事だったり、トラブルだったり、仕事や恋愛にも言えることなんですね。
目に見えないものでも、様々な角度から見ることが大切なのですね。
ついつい忘れてしまいがちですが、時に冷静になって物事を多角度から見ることを実践してみましょう。
見方を変えるのが難しいときは… ~出来事は無色透明~
それでも、見方を変えるのが苦手な人もいると思います。
特に、いつもはできる人でも問題や悩みを抱えたり、パニックになったりしたときは全て主観的に、かつ一方的に物事を見てしまいがちですね。
しかし、問題を抱えているとき、辛いときにこそ、この「物事の見方を変える」という考え方で気持ちを切り替えられると、自分が楽になるのです。
物事の見方が偏っている、なかなか見方を変えることができない、というときは、その出来事に対して自分のイメージを被せて見てしまっているのですね。
なので、そのイメージが強すぎて多角度から見ることができなくなっています。
先述した経営がうまくいっていない会社社長の出来事のとらえ方を考えてみると、出来事は経営の不振ということですが、それを社長はマイナスのイメージで捉えているので悩み事となったのですね。
しかし、同じ出来事でも、今成長するとき!とか、ピンチはチャンス!とか捉えることができると全く変わって見えてきます。
実際、出来事や物事は「無色透明」なものなのです。
それを自分のイメージを被せて見てしまっているので、もともとは無色透明な出来事が「悪い出来事」、「いい出来事」になってしまうのですね。
ですので、問題を抱えてしまったとき、出来事はもともと無色透明だと考えてみてください。
その無色透明な出来事に自分がどのようなイメージを被せてしまっているか、そしてそれに対して自分がどのような反応を作り出しているか、ということを考えてみると少し見方を変えることができるようになってくると思います。
リフレームが上手な人は… ~客観視が大切~
このように物事の見方を変えることを、NLP(神経言語プログラミング)では、『リフレーム』と言います。
ご存知のとおり、フレームとは枠組みのことですね。自分の考えの枠組みを変えるので『リフレーム』というのです。
実際、考え方の枠組みを変えるといってもピンとこない方は、実際に枠を使って飾ってある絵などを思い浮かべてみてください。
同じ絵でも、枠が違うだけで違った印象を受けると思いませんか?
例えば、有名な絵画のモナリザが安っぽいアクリルの黄色や青の枠に飾られていたらどのような感じを受けますか?ずいぶん印象が変わってきますね。
そして、このリフレームが上手な方は、自分自身を外側から見る客観視も上手なことが多いのです。
客観視ができない人は、自分の主観で物事を見てしまっているので、なかなか見方を変えられません。
しかし、無意識のうちに客観的に自分のことを見ることができる人は、主観で見ていないので、物事の見方を変えるやすい状態になっているということですね。
問題にぶつかってしまったとき、悩み事を抱えてしまったとき、この『リフレーム』ができると少し気持ちが変わってきます。
皆さまもぜひこの『リフレーム』を身につけてみてくださいね。